検証!! う る わ し の 十 六 面 相
百合太郎が叫ぶ。「でたな 出場16回目のフィリップ!!」
対して、フィリップ本人(この時は サファヴィ・コーイヌールのフィリップ) も名乗りをあげる。
「あるときは裾花の月王 。またあるときは北の海賊。 はたまた大学きってのプレイボーイに 黄泉の王。 ちかいところで土方歳三。 あらゆる時空間をこえて変幻自在のこの十六面相…」
―― 『王子さまがいいの!』より
DOZIさまの最重要レギュラーキャラ、 うるわしのフィリップ。
彼は「いつでもどこでもおなじかおをしてでてくる」([『エメラルドの海賊』)。 果たして、この十六面相の実体は・・・? 正解はDOZIさまのみぞしるところやも 知れませぬが、やはり、好奇心には勝てませぬ・・・秋田文庫「王子さまがいいの!」
ISBN4-253-17607-0
4,まず、コーイヌールのフィリップの名乗りの確認から。1,「デートレフが落ちている!!」
まんが専門誌「ぱふ」
1980年7月号と、思わず私は叫んでいた。
1980年7月号「ぱふ」が『木原敏江の世界』の特集で、実は、この検証している。 20数年ぶりにDOZIさま回帰をした私が、1999年にもなって今更ながら、 それを読んだ時のことである。
かくして、私は自分の手でこれを検証しなければならなくなった… (って誰に頼まれたわけでもないのだけど)余談ですが…
デートレフと聞いて、「ある日かわいいケティがいった」とその冒頭がすらすらと口を ついて出たあなた!
ご安心ください。あなただけではありません。少なくとも、ここにもう一人同じような 者がおります!
そして、このデートレフ、ケティ、テオドール故に、かつて、 フェルスターの戯曲『アルトハイデルベルク』を読んでしまったというあなた! メール下さい! 私だけじゃなかったと安心したいっっ!!!
2,私の独断と偏見に基づくフィリップのお約束其の1 フィリップは原則として脇役である。
其の2 例外的に主役を張る時でも主役同士、男性の相棒がいる。
たとえ主役を喰うほどの魅力や存在感があっても、あくまで脇役。時には、 一コマのチョイ役なんてこともある。
フィリップは単独では主役をやらない。そして、彼の相棒は黒髪の男の子が多い。
目頭に小さい白丸が見えますか?
うるわしい容姿は鉄則であるが、時空間を乗り越えるので髪質、髪型、 身長などバリエーションがかなりある。
その中で共通項が「目頭の水溜まり」。 はっきり描かれていない場合もあるが、目頭に全く水溜まりらしい 雰囲気がないキャラはフィリップと言い難い。其の4 自分の髪の毛をくわえる癖がある。
髪の毛の他、小枝、バラの花びら、草花などを、時空間を超えて良くくわえている。其の5 口癖
「ふん」だとエーベルバッハ少佐、「ふっ」だとSISのロレンスになってしまうが…
「はん」、「あはん」の感嘆詞。
「およし」「おやめ」「おまち」「まかせておおき」などの言い回し。
3,作品年度の検討記憶に基づく傍証的な資料であるが、『あーらわが殿!』連載時の「おたより紹介」のコーナーに
「フィリップは『天国より愛をこめて』で初登場して、『5、600万kmの恋歌』で 確立したんですよね」
というファンレターの抜粋が紹介されていた。したがって、それはDOZIさまの認識と一致していると 思われる。(追補参照)
よって、『天国より愛を込めて』から『王子さまがいいの!』の間の作品で検討する。 アンジェリク(連載 1977年〜1979年)のフィリップはカウントできないんですね…。 (下記リスト 参照)★ 追補 ★ (1999.6.01up)
週刊マーガレット1973年48号,P24 欄外 の「みんながムフフ!!」というコーナーに
「うるわしのフィリップは、たしか『天国より…』で登場、 『5600万km…』で確立されたわけですヨネ。 以来好きなの」
というお便りの紹介があります。
マーガレットコミックス 「あーら わが殿!」前編 P80、角川全集 P82の上部の余白が大きいのは、 初出当時はページの下にこのコーナーがあったためと思われます。
「あるときは裾花の月王 。またあるときは北の海賊。 はたまた大学きってのプレイボーイに 黄泉の王。 ちかいところで土方歳三。 あらゆる時空間をこえて変幻自在のこの十六面相…」
裾花の月王 くれないに燃ゆるとも 北の海賊 エメラルドの海賊 大学きっての
プレイボーイ天国より愛をこめて、 5、600万kmの恋歌、
お出合いあそばせ、どうしたのデイジー?黄泉の王 白い森 土方歳三 天まであがれ! コーイヌール 王子さまがいいの!
水色のメルヘン キャプテン・キッド ジークリンデの子守り歌 ヘンリック・オーディン(『白い森』の黄泉の王も同名) 銀河荘なの フィリップ・グレイ 銀色のロマンス セントジョージ学院 高等部の教壇に立っている典型的なフィリップ あーら わが殿! 鷹塔 摩利
以上で14人。あと、2人の特定ですね。
『花ざかりのロマンス』…サン・フォンのオディロン・ガブリエル
『いとし君へのセレナーデ』…デートレフ・ローゼンクランツ
を、私はフィリップと認定したいと思います。
理由は以下に…
- コーイヌールのフィリップが 「近いところで土方歳三」と言っているのは、 これがコーイヌールのフィリップの直近のフィリップであることを意味していると 考えらる。
それゆえ、『天まであがれ!』以前の作品に登場していると思われる。- また、一応、『天まであがれ!』から『王子さまがいいの!』の間に登場するキャラを検討すると、 そのうち、『落ち葉だらけのロマンス』のアルマンディン・ガーネットおよび 『アモール』のクールオディール・ウィンザーは、どちらも「目頭の水溜まり」は 描かれているが、単独の主役なので除外される。
(同様に、『愛は不死鳥のように』のカール・レギーネ・フォン・リヒテル少佐も単独の 主役なので除外。5歳で母に捨てられた為、絶望的なマザコンなんていかにもフィリップ的ですが。)- 『ラストタンゴ』のマルセル・ロンサール。「目頭の水溜まり」もないし、 容姿もフィリップ的ではないが、役どころとしては前二者よりはフィリップ指数が高い。
ただ、フィリップの基本的な役どころは、あくまで脇役で、父や一族の敵を撃つとか、 母の悲惨な人生に対する復讐を企てる、或いは、父が不幸にした娘への贖罪の旅の出るなど、 自分以外の人間の負債を清算することである。
これに対して、マルセル・ロンサールはアスワン及びアスワンの母親に自ら負債を 負っていたわけだから、フィリップ該当要件を満たすとは言えない。詳細は、 フィリップ身上書一覧(1) / フィリップ身上書一覧(2) をご覧ください。
☆1972年(昭和47年)
天国より愛をこめて 1★
ジークリンデの子守り歌 2★
5,600万kmの恋歌 3★
水色のメルヘン 4★
あなただけこんばんは
死んでもいい
お出合いあそばせ 5★
くれないに燃ゆるとも 6★
☆1973年(昭和48年)
どうしたのデイジー? 7★
愛は不死鳥のように
エメラルドの海賊 8★
銀色のロマンス 9★
あーら わが殿! 10★
☆1974年(昭和49年)
花ざかりのロマンス 11★
銀河荘なの! 12★
いとし君へのセレナーデ 13★
☆1975年(昭和50年)
白い森 14★
天まであがれ! 15★
ラストタンゴ
落葉だらけのロマンス
☆1976年(昭和51年)
花草紙
アモール
王子様がいいの! 16★