18, ヴィオラ |
今夜は眠れない。
確信めいた予感がひしひしと迫る。 |
身体がほてって耳の奥が脈打っている。
熱を持った瞼(まぶた)が重い。耳元で「おやすみ」とボーフォール公がささやいた。
耳朶に口ひげが当たってくすぐったい――、これはいつものことだ。ぼんやりと考えるが、もう体の力は抜けている。
手足が動かないと考える自分の意識も、もはやどこか遠いところにある。
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弦を爪弾く音が遠くから聞こえてくる。 |
「…それは?」 |
「そろそろ正式にリュシルの婚約が整うので、父親からのお祝いを用意しておかなければならないという訳さ。
それなりの楽器(もの)を捜させていたのだが――、まあ、これなら良いだろう」 |
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摩利が書斎の扉を開けると、思音は着替えもせず電話を受けていた。 (2001.11.05 up)
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