2003年1月3日 その1 |
新年早早、お時間を頂きましてありがとうございます。今年もよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。(こほこほ) あ、お風邪ですか? ええ、少し。でも、(このインタビューは)大丈夫ですよ。 「プチフラワー」から「フラワーズ」に雑誌名が変わってから、入稿などのシステムも変わって年末進行(12月の原稿締め切りが他の月より早いこと)が、例年より2週間も早かったの。 とてもじゃないけれど間に合わない……はずなんですが、悲しいかな、火事場のバカ力でなんとかしちゃうのよね。で、その反動が今におよんで、ちょっとぐったりしてるところなのです。 |
先生には本当に良くして頂いて、おかげさまで2002年12月にあらDOZIも10万ヒットを超えました。 おめでとう。お祝いをかねて年賀状を送りますね。 ありがとうございます。 昨年お送りいただいたサイン入りの絵葉書は、文字通り北は北海道から南は沖縄まで津津浦浦の木原ファンにお嫁入りしました。 みんなに喜んでもらえて私もうれしいわ。 今年の年賀状はレオンくん(サン・ジュスト)です。単行本1巻の裏表紙の絵に少し手を加えたから、一応オリジナルね(笑)。 彼の顔は純粋に西洋的な顔なので、『夢の碑』シリーズの“日本”にはまっていたという読者から「『杖と翼』を読み始めたころは違和感がありました。今は慣れましたが」ってお手紙をもらったくらい(笑)。
『見返り美人』の女装のお兄さんの顔がガルボ顔、あれがガルボ眉です。はじめのころのレオンの眉もその流れで、少女漫画のキャラにはあまりないパターンかな。 レオンの絵葉書は、今年も何枚か送りますから、あらDOZIをご覧の方に差し上げてください。 |
ありがとうございます。今年も切り番で皆さんに差し上げます。 あらDOZIの新年トップページにも、画像使用と文字入れをお許し下さいましてありがとうございました。 画集から『摩利と新吾』の「ロック!」を拝借しました。ふたりが演奏している曲、ふたりに演奏して欲しい曲を、皆様に掲示板に書いていただこうかと思いまして。 それは楽しそうね。リクエストした曲で書き込みをした人の年代がわかるかな(笑)。 はい、グラムロック・リアルタイム世代の方が、「絵柄からはグラムロックだとおもいますので」という断り書きとともにT.レックスの「メタルグルー」をあげています。 うん、「ゲットイトオン」とか! クイーンはその後になるものね。 摩利に「キラークイーン」を歌ってほしいという書き込みもありました。 摩利ってどんな声で歌うんだろ? そういえば考えたことないなあ。 カン高いテノール…もなんだかぴったりこないし、かといってバリトンつーのもなあ…。ううむ。あの年頃って……? 摩利と新吾がグラムロックしている“2003年の新年画像”および皆様のお書き込みは、ゲストブック「深き陽炎の記憶から」でご覧いただけます。 |
フラワーズ2月号(2002年12月28日発売)の『杖と翼』は、一か月のお休みをはさんでフランス革命前半総ざらえでした。
フランス革命はなにがなんだかよくわからない時代だから、途中で一回、流れをまとめておかなくちゃとずっと思っていたの。わかってもらえたかなあ。 特に『杖と翼』では主人公アデルが、革命の途中で外国から飛び込んでくる構成にしたので、革命勃発のころからの時代的つながりを説明しておきたくて。 私は特定のキャラクターが好きというのではなくて、フランス革命そのものが面白いんです。“サン・ジュスト命(いのち)” とか“ダントン命”…(笑)とかいう立場であれば、作品の描き方もまた変わってくると思いますけど。 今回、流してさらっと描きましたが、実際には革命家同士がいかに裏をかくかとお互いに虚虚実実だったのね。私は革命家たちをやさしい顔に描いてますが、実際はそんなのどかな顔はしていられなかったでしょうし。
活躍した人たちはみんな若かったわよね。35、6歳がメインで、20代後半もいて、それが数年のうちに全員死んでしまう。彼らの誰ひとり良い思いはしていない捨石よね。 実現するはずない無理な理想を掲げているのよね〜。飢饉とか外国からの侵略とか、目の前の現実は悲惨で。 パフォーマンスが上手でカリスマ性がない人は党首にはなれない時代だったわね。いかに民衆を扇動できるかアジれるか、なのね。なにしろ正規の警察がなくて、恐怖政治を支えたのはサン・キュロットと呼ばれる民衆と志願兵でしたもの。 で、政治生命の終わりがそのままギロチンでしょ。生き延びるためには、どうしても民衆に媚を売らなければならなくなる。ポピュリズムというか。 民主政治ではなく衆愚政治ですね。 そうなの。ロベスピエールの研究書を読んだんですけど、そんな中でロベスピエールは派閥、党派をこえて信望があったのよ。ジロンド派のロラン夫人からマラーもダントンも、みんなロベスピエールは仲間に入れたかったのね。 それでもわが道を行くというのが、ロベスピエールらしいところなんですが。 どれだけ多忙でも秘書一人おかずに仕事を全部自分ひとりで処理して、結局、睡眠時間を削るしかなくて、疲れてだんだんやせ細って怒りっぽくなって。 本当にまじめにもほどがありますよね。でも、それも彼の魅力のひとつだったのかもしれない。 |
その場面で添えられていた花は百合でしたが、これは聖母マリアの百合なのでしょうか? 聖母まではいかないけれど、聖女くらいかしら。 中世キリスト教絵画の約束事では聖母マリアに添えられるのは白百合ですよね。 うん、そう、ジャンヌ・ダルクも白百合よ。 本当はね〜、百合なら豪華で派手なカサブランカを描きたいのだけど、あの時代にあるのはマドンナ・リリーかオールド・リリーくらいでしょ。 タイガー・リリー(鬼百合)というわけにもいきませんしね。 あはは。一般的にあの時代の花といったら、野の花かハーブかオールドローズ(キャベツ薔薇)か、という感じになるのよね。別にそこまでこだわらなくてもいいのだけど、なんとなく、こだわりたいのだわ。 『アンジェリク』のときは「なんでもあり!」と思って、豪華な薔薇をどかどか描きましたが。 “キャベツ薔薇”はもちろん正式名称ではありません。『銀晶水』(秋田書店ハードカバー)の折り返しで先生がご説明している文章を引用させていただきますと…。 これは、本名をバーガンディ・(ブルゴーニュ=ブルグンドのこと)ローズといって、ブルグンド地方原産の古い由緒あるバラなのです。ちゃんと、バラ図鑑にものっています。でも、やっぱりキャベツみたい。
フランスのあさみどりの野原に点点と真っ赤なひなげしが咲いて、それはきれいなんです。それが、なんとなくポンと浮かんで…、使いたいなと思ったのね。 ひとつひとつは小さな花だけど群れるととってもきれいで、ひ弱なようでいて風をやり過ごす雑草のしなやかさみたいな強さがあって。メルヘンにも似合うし。 ……と、言っておこう。本当はただの思いつきなの(笑)。 でも、ギャルソンヌのアデルにはぴったりでしょ。「ひなげし」はフランス語では「コクリコ」です。 |
ギャルソンヌ(直訳は男みたいな女、転じておてんば娘)といえば、『緑のエリオット』を思い出します。でも、アデルのほうがエリオットより、ずっとたくましい感じです。
うん、だから眼が大地の色なの。私の主人公には珍しく。髪は麦わらの色だし。 そういえば、アデルの眼はブルーでもグリーンでもないし、金髪でもありませんね。 緑の瞳のアンジェリクもたくましいけれど、まだ男の顔色を見ているところがあったでしょ。アデルは全然ないの。マイペース、男以外の動機で動くのね。本能で。 ただ、アデルはたくましいけれど、泥臭くはないです。 うん、泥臭くはないわね。やっぱり都会の子ね。しかも能力がぬきんでているし、あと、運が強い。 私の作品の中では異例な主役です。少女漫画のキャラクターとしても少ないパターンじゃないかしら。 かつてのDOZI作品の定番ヒロイン、“心配でまわりの人間がつい手助けしたくなるドジなイモ娘”ではありませんね。そういえば、DOZIキャラは“イモ娘”というわりには泥臭い女の子はあまりないですね。 もっとも、アデルは能力がぬきんで過ぎて、並みの少女にはできないレベルのむちゃをします。それで周囲がはらはらして。 自分の力で運命を切り開いてゆくアデルを描くのは楽しいです。編集の方にも現代の子ですねって言われました。 アデル・ド・カローの“カロー”ですが、『5600万qの恋歌』の主役はハニー・カローでフランスを舞台にしたお話ですが、何かつながりがあるのでしょうか。
そういえば『5600万qの恋歌』は舞台をパリにしたので、「ハニーじゃなくてアニーではありませんか」って、手紙をもらったことがあるわ。フランス語はHの発音しないから。でも、私はハニーにしたかったんだもん(笑)。 アデルもどうしてもアデルにしたかったのね。だけど、アデルじゃ貴族の名前じゃないから、アデルから転がしていろいろ考えて。ルイ16世の妹と同じアデライードにしようかなとも思ったけれど、なんかそんな感じじゃないし。なんとなくアドリエンヌにしました。 |
最初の設定ではアデルは金髪の縦ロールだったんですよね。
そうです。顔立ちももっと地味でした。でも、なんとなく性格にしっくりこないので、考え直してふわふわ巻き毛にしました。そうしたら、派手に目立つキャラクターによく似合ってかえってよかったわ、うん。
2003年1月3日電話にて
引用転載厳禁 (2003.1.23 up) |