◆◆ コンサートレビュー 23 ◆◆ |
プロコフィエフ《賭博師》 フランス国立リヨン歌劇場(2009年 1月22日) |
フィナンシャル・タイムズ(1月25日付け)(抄)
フランシス・カーリンによる公演批評(抄) いつも機知に富んだリヨン国立オペラ劇場の支配人セルジュ・ドミは、 毎年行われるオペラ・フェスティヴァルに、今度もうまいテーマを考えついた。 今年のテーマは、「敗北したヒーロー」というもので、フィリップ・グラスの『犯罪者植民地』、 フランク・マルタンの『ハーブ入りのワイン』、そして、プロコフィエフが最初に完成したオペラ作品、『賭博者』である。 『賭博者』は、いろいろいな意味で「敗北したヒーローだ」。 1917年に完成され、1929年、ブリュッセルで改訂版により初演されが、その後は、作曲者の死後まですっかり忘れ去られてた。 最初の2幕を聞いただけで、何故この作品が棚上げにされたかがよく分かる。 切れ切れでまとまりのないスコアがドストエフスキーの原作を窒息させ、主題提示部で歌手は息を継ぐこともできないのだ。 これは、プロコフィエフが作品が演奏可能かという問題より、オペラの伝統をどのようにして打ち破るかを優先したためだろう。 ところが、奇跡が起こったように、プロコフィエフの楽想がばりばりとエンジンの回転数をあげ、 人物と物語が、劇的な意志をもった音楽によって命を吹き込まれたのだ。 大野和士はこの公演が音楽監督としてのはじめての登場となるが、 ぎしぎしと荒削りの情け容赦のないパッセージの連続を一貫した流れにまとめ上げ、プロコフィエフの意図した叙情を守り抜くことに成功した。 リヨンが大野和士の音楽監督就任をどうしてあんなに熱望したかという理由がよくわかった。 (以下略) 注)リヨンにおける大野の職名は音楽監督ではなく「首席指揮者」である。
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(2009.02.01 up) |