公演レビュー 目次 / ホームページ
◆◆ コンサートレビュー 19 ◆◆


子どもたちの病院に大野和士がやってきた!
            国立成育医療センター 2006年 8月20日

 たった1回の病院コンサートのために、大野さんがブリュセッルから、残暑厳しい日本に戻ってきました。

 母体となったのは、1981年に結成された「全日本医科学生オーケストラ・フェスティバル」。 当時まだ東京芸術大学の学生だった大野さんは、この年の第1回と翌年の第2回を指揮。
 このたび、当時の医学生、今は全国に散らばった働き盛りのお医者さんたちが、「25年ぶりに集結して病院コンサートをやろう!」ということになりました。


この楽器を持っている方たち(約90名)、全員現役のお医者さん! 信じられますか!?

 大野さんも病院コンサートの趣旨に賛同、多忙なベルギー王立モネ劇場音楽監督の仕事を務めながら、このコンサートのために時間を捻出し、ブリュッセルと日本をボランティアで往復しました。

 出演者はお医者さんですから、どこの病院を会場にすることもできます。
 しかし、「夏休みなのに海も山にも行けず、病床で過ごさなければならない子どもたちに、音楽を、生きる喜びを届けたい!」という、大野さんたっての希望で、会場は 国立成育医療センター に決定。


かつて大蔵病院などがあった敷地に建つ国立成育医療センター
 
 第1部が始まりました
    ビゼー「カルメン」前奏曲
    ドボルザーク「交響曲第8番」より 第3楽章
    ルロイ・アンダーソン「トランペット吹きの休日」
    ルロイ・アンダーソン「そりすべり」
    ルロイ・アンダーソン「忘れられし夢」
    ルロイ・アンダーソン「プリンク・プレンク・プランク」
    ルロイ・アンダーソン「舞踏会の美女」


 聴衆は、入院している子どもたちや、その家族の方々です。
 演奏会場に来られない子どもたちのために、病室にもコンサートの模様が生中継されました。
 大野さんは、病室で中継を楽しんでいる子どもたちにマイクで呼びかけたり、演奏会場で「そりすべり」の鈴をたたいたお子さんと共演したり、「円舞曲」を踊ってみせたり、の大活躍。


撮影:金沢賢

 第2部は、病棟に出向いて、小グループでの巡回演奏。
 お医者さん方も、「久しぶりに楽器を触って腱鞘炎になっちゃった」と言いながらも、腕に湿布をベタベタ貼って大奮闘。前日は12時間も練習したとか!
 大野さんも「子どもたちは反応が正直だから、演奏していて怖いよ」と時差ぼけ(?)の体にムチ打って、汗だくの熱演。


講堂には車椅子やストレッチャーでやってくるお子さんも。

 第3部は、再び講堂に戻って、大ヒット・ミュージカル
アンドリュー・ロイド・ウェッバー「オペラ座の怪人」組曲
から始まって、
ワグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
アンコールの 
グリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲
で全プログラムが終了。
 講堂には「ブラボー」の代わりに、小さいお子さんの「ありがとー」の大きな声がこだましました。

大野和士は「オペラ座の怪人バスター」じゃなかったのか?!

 昨年(2005年)10月のモネ劇場来日公演でも、「子どもたちに贈るオペラ《ドン・ジョヴァンニ》」を企画するなど、普段見ることのできない大野さんの優しさに触れることのできた、非常にぜいたくな1日でした。

 北海道、新潟、滋賀、静岡、長野、広島、鳥取、そして熊本。
 全国から集まったお医者さん方も、子どもたちのために心を込めて演奏してくださいました。
 25年ぶりの再会での祝杯もそこそこに、患者さんの待つ地元の病院や診療所に足早に向かう姿には、さらに感動しました。
 きっと、大野和士と共演したこの日の感動が、命の灯となって、全国の患者さん方にも広がっていくことでしょう。
 みなさん本当にお疲れ様でした。
 

このコンサートは、会場のスペースと安全への配慮から、一般の方々への告知を控えさせていただきました。
(コンサート主催者より)

取材のため便宜を図ってくださったコンサート主催者、病院関係者の方々に改めて御礼申し上げます。
(サイト主催者)
(本文写真とも引用転載 禁止 2006.8.24 up)


公演レビュー 目次 / ホームページ