◆◆ コンサートレビュー 16 ◆◆ |
アルスター管弦楽団 演奏会 (2003年1月31日) the Ulster Orchestra, Jan. 31, 2003 |
アルスター管弦楽団のウェブサイトに掲載されたコンサートレビューの和訳 |
《ベルファスト・テレグラフ》 指揮者、音楽の真髄に迫る ラスコル コンサートレビュー |
アルスターホール(ベルファスト、北アイルランド) 2003年 1月31日 19:45 ストラビンスキー:プルチネッラ モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番 K.459(Pf.:パスカル・ロジェ) ドヴォルザーク:交響曲8番 アルスター管弦楽団 大野和士(指揮) |
アルスターホールでの昨晩のアルスター管弦楽団の演奏会は、天候条件のおかげで、観客動員数はあまりかんばしいものではなかったが、出席した観客は、悪天候をおして足を運んだ甲斐のある、素晴らしい演奏を聴くことができた。演奏会に迎えられたのは、2000年の記念シリーズでのめざましい演奏で記憶にあたらしい、日本の卓越した指揮者大野和士だ。 |
当夜のプログラムは、ロシア・バレー団のディアギレフとマシーンが世に送り出したいささか風変わりな作品、ストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」で開幕した。
ほとんどバロック・オーケストラというべきアンサンブルを用いて作られた魅力的な作品で、われわれはソロ・バーツが随所に活躍する可憐な演奏を楽しむことができた。 |
モーツアルトのピアノ協奏曲19番のソリストをつとめたのはバスカル・ロジェで、過去数年間、当地にもたびたび来演している。ロジェは、高い技術的水準と感性を見せ、オーケストラのサポートも精密で、この演奏には賞賛すべき点が多々あったしかし、ロジェのピアノは、しばしばこの愛らしい作品が要求している輝きに欠けるきらいがあり、そのため演奏は魅力的な箇所も多い反面、精彩に乏しい場面も目立つという結果となった。 |
ドボルザークの8番のシンフォニーは、熱狂的に迎えられた。この素晴らしい作品が、完璧な技量と、きわめて驚嘆すべき効果をもって演奏されたのだ。
レスリー・ハットフィールドがコンサートマスターをつとめるオケは、絶好調で、弦が第一級の質を披露したほか、ソロ・パートも何度となくスター的な名人芸を繰り広げた。 指揮者のオーケストラのコントロールは見事という他はなく、オケもそれに応えて、私自身、長いこと耳にしたことがなかったほど素晴らしいアンサンブルを聞かせてくれた。 |
音楽の真髄に迫るという大野の評判は、曲のあらゆる時点で証明されていた。曲はすみからすみまで驚くべき高い水準に達しており、演奏は全体として珠玉というべき仕上がりを示していた。付け加えなければならぬことがあるとすれば、聴衆がベルファストでは滅多に見られないような熱狂的な反応をしめしていたということ、うれしいことに、オーケストラのメンバーも、このきわめて素晴らしい指揮者に聴衆と共に賞賛の拍手をおくっていたことだ。
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翻訳 : 大野英士 |
1956年東京生まれ 湘南高校を経て、東京大学卒、早稲田大学大学院満期退学、パリ第7大学大学院修了。 文学博士(ドクトール・エス・レトル)。専攻はフランス文学。 フランス19世紀末のデカダンス作家ユイスマンスの日本では数少ない専門家として知られる。 現在早稲田大学非常勤講師。 また、翻訳家・ライターとして、文学だけに限らず多方面で翻訳・執筆活動を展開。 指揮者大野和士の実兄。(メールはこちらへ) |
(2003.2.27 up) |