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公演プログラム |
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大野氏のモネ劇場音楽監督就任のお披露目となる『エレクトラ』を見に、EUの中心地ブリュッセルに向かった。
プレミエから一週間後の24日午後8時、照明が全て落とされた暗闇の中、息を呑み静まり返った劇場に、大野氏の呼吸と共に冒頭の主題が打ち鳴らされた。
私には、大野氏と『エレクトラ』に関するひとつの思い出がある。約3年半前、カールスルーエの劇場に『オランダ人』を見に行った終演後、大野氏は私を快くカンティーンに連れて行き、ビールを片手に夜遅くまで音楽について熱く語ってくださった時のことである。
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モネ劇場の公演情報月報から |
大野氏は、確か「指揮者は棒を振るテクニックだけでなく、指揮台の上にいるその存在が大切だ」という話に続けて、『エレクトラ』の冒頭の主題についての話をされた。「この冒頭を振るのは、非常に難しいのですよ。初めの音は裏拍から始まるので、頭の休符を点で与えるとオーケストラは合わせやすいけれど、その反面、作曲家が意図している力強い音が出なくなってしまうのです。この冒頭の主題は、『エレクトラ』の最も重要である<アガメムノンの主題>でもあるので、全神経を集中させた凄まじいフォルテッシモが必要とされるのです。晩年のベームは、ハエを追うような指揮でどこが振り下ろしか分からないのに、この冒頭でウィーン・フィルは地響きのするような凄い音を出していますからねぇ。」・・・こんな内容であった。
大野氏が実際どのように冒頭を振ったのか、見ることはできなかった。しかし、心臓をえぐるような音が瞬時に劇場に詰め込まれたのは確かである。この強烈な冒頭により、観客は大野氏の存在を、幕が閉じられるまで確固たるものとして意識しつづけることになったと言えるだろう。
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配役表 |
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大野氏は常に舞台上の歌手とオーケストラを絶妙のバランスで保ち続けおり、シュトラウスの分厚いオーケストレーションの中でも歌手の声はよく通っていた。オーケストラの音量を抑えた場面でも、色彩や躍動感は失われず、糸を編むようなスコアが浮き彫りにされた。これらの結果、まるでオーケストラがこの作品の主役であるかのように、エレクトラの心理状況を表すことに成功していたのである。
シュテファン・ブラウンシュヴァイクの演出は、音楽に逆らわずに、エレクトラの心理描写に重きを置いた好感の持てるもの。
ただ、歌手については、若干のミス・キャストも見られた。特にオレスト役のアルベルト・ドーメンには違和感が残った。
集中度の極めて高い約1時間半は、ブラボーが飛び交い幕となった。
終演後、大野氏の楽屋を訪ねると、「今日のエレクトラ役の歌手は急遽代役になった人(ルアナ・デヴォル)で、開演前たった5分合わせただけなんですよ」と笑いながら話された。オペラの経験を豊富に積んだ人ならではの余裕ぶりである。そして大野氏は、劇場の方々とフランス語で挨拶を交わしながら劇場を去って行かれた。
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