◆◆ コンサートレビュー 10 (4) ◆◆ |
(4) ワグナー 舞台神聖祝典劇「パルジファル」 2002年 7月17日、20日 バーデン州立歌劇場 |
演出には、当初、クリスティーネ・ミーリッツが予定されていましたが、彼女がある劇場の総裁に 就任してしまったことから、演出を担当することができなくなり、代わりにトマス・シュルテ・ミシェルが 演出。 演奏は、「こうもり」の快活なテンポに対し、「パルジファル」では一転して、ゆったりとしたテンポ。 とても美しい響きで、同席したある音楽評論家は、『ドイツのオーケストラにしか出せない響き』と 形容されていました。 私には、クンドリーにつけられた音楽が、実に美しく、優しく響いたのが、特に印象に残りました。 悩み、さまよえる魂が包み込まれ、救われるような気がしました。 |
最終公演のカーテンコール |
7月20日、最終公演。第3幕の後半以降は、神憑り的な音楽となりました。 オケも合唱も音を出し切っているように強く響くのに、その中から、たとえばハープの細かい音形まで明瞭に聴こえてくる。 劇場のメンバーも、聴衆も、これで大野和士が最後だという特別な感慨を共有していたのか。 音が鳴り止んでからも、おそらく10秒近くの深い沈黙。 何回も聴いてきた地元のファンにとっても、一期一会の体験だったのではないでしょうか。 ワグナーの直弟子モットル以来の伝統を持つ、このカールスルーエの劇場で、欧州文化の最も深い部分に触れる「パルジファル」で、大野和士が成し遂げたもの。 私も、この瞬間のことを一生忘れることは出来ないでしょう。 |
劇場から贈られた、過去6年間の上演を記念するアルバムを前に。 (右は音楽評論家の山之内英明氏) |
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(2002/08/26 up)
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