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◆◆ コンサートレビュー 10 (1) ◆◆


バーデン州立歌劇場(カールスルーエ)最後の公演

大野さんは、バーデン州立歌劇場(カールスルーエ)の音楽総監督としての6年の任期を見事に 務められ、7月20日「パルジファル」をもって全ての日程を終了しました。
2002年8月からは、ベルギー王立歌劇場(ブリュッセル、通称:モネ劇場)の音楽監督に 就任されます。
このたび、カールスルーエにおける最後の公演のいくつかを現地で見ましたので、それらの様子をお伝えします。
(文責・写真:監修者)

2002年7月15日(月) バーデン州立歌劇場管弦楽団演奏会
2002年7月17日(水) ワグナー「パルジファル」
2002年7月19日(金) ヨハン・シュトラウス「こうもり」
2002年7月20日(土) ワグナー「パルジファル」

バーデン州立歌劇場の外観
バーデン州立歌劇場の外観
(1) バーデン州立歌劇場管弦楽団演奏会
    2002年 7月15日 バーデン州立歌劇場
       ヴォルガング・リーム「影と流れ 〜後奏と前奏〜」
       グスタフ・マーラー 交響曲第2番「復活」

 大野さんは1996年10月、ヴェルディの「オテロ」でバーデン州立歌劇場のGMD(音楽総監督)としてのデビューを飾りました。
 しかしGMD就任のきっかけとなったのが、オーケストラ公演での成功でした。
 また、演出や舞台の出来、不出来に煩わされないオーケストラ公演は、指揮者にとっての腕の振るいどころでもあります。

楽員、合唱団、聴衆と喜びを分ち合う大野和士
花束を贈られ、楽員、合唱、聴衆から喝采を浴びる大野和士
 まず演奏されたのは、現代ドイツを代表する作曲家リーム(カールスルーエ在住)の作品。
 この曲は、東京フィルハーモニー交響楽団とNDR(北ドイツ放送)交響楽団との共同委嘱作品で、2000年1月21日、大野和士指揮の東京フィルによって日本初演されています (世界初演は同月エッシェンバッハ指揮NDR響)。
 曲の冒頭と、最後にも出てくるウッドブロックが、オーチャードホールで聴いた時には、まるで木魚を連想させたのに対して、この日は、乾いた打楽器の響きとしか、聞こえなかったのが面白い現象でした。

 休憩をはさんで、いよいよマーラーの「復活」。
 大野さんの「復活」と言えば、東京フィル常任指揮者への就任披露演奏会、世界に名が知られるきっかけともなったリヨン管弦楽団との共演など、語り草となっているものが多いそうですが、筆者は念願かなって初めての経験でした。

 大野さんによると、6月のオーケストラ公演における「アルプス交響曲」あたりから、オーケストラの気持ちがぐっと盛り上がってきたそうで、この日は、まさに6年間の集大成、いや指揮者大野和士の一大決算と言っても大げさではない、素晴らしい高揚感に満ち溢れた演奏会となりました。
 演奏は、オケも合唱も、異様なまでのハイ・テンション(指揮者は云うに及ばず)。
 合唱が終わって、曲が終わるまでの30数小節の間、オーケストラの楽員や合唱団員の中には、感動のあまり顔をしかめ、しかしプロフェッショナルとして涙は流せない、そんな苦しげな顔つきになってしまった人が何人か見られたのが印象的でした。
 大音量で曲が鳴り止んでも、しばしの沈黙。そして堰を切ったような喝采と拍手。

楽員代表による惜別のスピーチ
楽員代表による惜別のスピーチ
 終演後は、そのまま舞台上でGMD大野に対する惜別のセレモニー。
 劇場、オケの団員から花束が贈られた後、楽員代表がスピーチ。
『オーノはGMDの第4の候補として登場したが、楽員の投票では圧倒的多数の支持を集めて選ばれた』
『以来6年、オーノのもとで、自分たちは大きな進歩を遂げたと感じている』
『ぜひまた、我々を指揮してくれる機会が来ることを、楽員一同、望んでいる』
 望まれて登場しても、いつしか支持を失い、離任の頃には、逐われるようにして任地を去る指揮者も多い中にあって、このようにして祝福され、惜しまれつつ送り出される、というのは、 『極めて異例で、少なくとも当劇場では前代未聞』(楽員)だそうです。

 劇場内のカンティーン(食堂)において、GMD大野主催によるパーティが開かれました。
 オーケストラの楽員はじめ、合唱、劇場ソリスト、バレエダンサーまで、ほとんどのメンバーが加わったそうです。
 大野さんは、深更に至るまで、別れを惜しむ人々に次から次へと声をかけられていました。
劇場内の食堂で開かれたパーティ
パーティに集まった人々

劇場内の食堂で開かれたパーティ
アルトのヴルコプフ(左)らと記念撮影

劇場内の食堂の従業員達との記念写真
食堂の従業員も別れを惜しむ
(2002/07/28 up)



(2) こうもり

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