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第1回 齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞


受賞のことば
 この度の齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞、誠に光栄に存じます。 指揮者として、いまだ道半ば、試行錯誤の毎日を送る身にとりまして、今回の受賞はまたとない励みになり、今後とも、たゆみない努力を重ねていく決意を新たに致しております。

 先日、昭和5年に出版された近衛秀麿先生著「シェーネベルク日記」を読み返しておりましたら、1920年代のベルリンで、齋藤、近衛両先生が時を同じくして、音楽の勉強に勤しんでいらした旨が記されておりました。 この書からは、フルトヴェングラーやワルターの生々しい指揮ぶりや、当時、新音楽であったドビュッシー、ストラビンスキー、スクリャービンなどについての評論と共に、先生方の音楽に対する厳しい姿勢がまざまざと覗え、大変感銘的です。 とりわけ、19世紀の古典派、ロマン派の音楽に対する深い洞察は、日本が初めて西洋音楽を取り入れてから、わずか50余年後のことであることを考えますと、ただ、ただ驚愕の念を禁じ得ません。 齋藤先生をはじめとする先達の方々は、帰国後この20世紀冒頭の最も興味深い時代の息吹を、そのまま次世代に伝えるべく、情熱を注がれたに違いありません。

 本日、その偉大なる遺産を少しでも受け継ぐことを許された幸せを改めて噛み締めると共に、先生方が達成されたこと、また達成しようとなさったことを見極め、さらに若い世代に伝えていくことを、自らの使命と心得る次第でございます。
2002年8月9日
大野和士



大野和士氏の贈賞にあたり
 大野和士氏は、何年も前から、よい指揮者になると見守ってきた1人です。

 ヨーロッパのオーケストラの音楽監督を務め、アメリカのオーケストラにもたびたび客演し、ボストン交響楽団の定期公演を振って、大成功を収めたときは、本物の音楽家だと確信しました。 着実にキャリアを築き、2002年9月よりベルギー王立歌劇場の音楽監督に迎えられたことは、彼の実力が世界に認められたことだと思います。

 日本においても、私の音楽仲間である新日本フィルの定期公演にて大成功を収め、また、大野氏のオーケストラである東京フィルハーモニー交響楽団ととも、オペラ・コンチェルタンテ・シリーズを始めるなど、日本での音楽文化の層をますます広げる大きな功績をあげています。

 これまでの功績から大野氏が、まさにこの第1回齋藤秀雄メモリアル基金賞にふさわしく、この受賞を期に、ますますの活躍を続けていくことを期待しております。
小澤征爾



齋藤秀雄メモリアル基金賞について
 (財)ソニー音楽芸術振興会(英文名称:Sony Music Foundation)[理事長=大賀典雄]は、2002年度(平成14年度)に「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を創設しました。
 この「齋藤秀雄メモリアル基金賞」は、チェリスト・指揮者・教育者として高名な故・斎藤秀雄(1902-1974)氏に因むものです。 折りしも、本年は齋藤秀雄氏の生誕100年に当たります。
 2000年3月17日に齋藤秀雄氏未亡人・齋藤秀子氏が90歳で逝去されました。
 齋藤秀子氏の遺言公正証書第参条に「財団法人ソニー音楽芸術振興会は、遺贈された財産で振興会の中に『齋藤秀雄メモリアル基金賞(仮称)』を設け、この基金により若手チェリスト、指揮者の発掘、育成を目的とした顕彰制度を実施してください。」と記載がありました。
 齋藤秀子氏から十数年前、同家の資産運用の相談を受けた当財団理事長・大賀典雄が同家の資産を買取った経緯があり、齋藤秀子氏の遺言に上記の文章が入ったものと思われます。
 (中略)
 当財団理事会、評議員会で審議の上、齋藤秀子氏の生前の希望により、大賀が小澤征爾(指揮者)氏、堤剛(チェリスト)氏とも協議した結果、この遺贈金は「齋藤秀雄メモリアル基金」として運用することになりました。
 (中略)
 当賞の内容は下記の通りです。
1.名  称 「齋藤秀雄メモリアル基金賞」
2.選考対象 顕彰年の前年に活躍した若手チェリスト、指揮者。
チェリストと指揮者を各々1年に1人顕彰することを原則とする。
但し、適切な該当者がいない場合は顕彰しない。
3.選考方法 選考委員会で選考の上、受賞者を決定する。
4.選考委員会
      委員長


      委 員

大賀典雄
(指揮者・ソニー株式会社取締役会議長・財団法人ソニー音楽芸術振興会理事長)
小澤征爾(指揮者)氏
堤剛(チェリスト)氏
  主  催 財団法人ソニー音楽芸術振興会
  特別協力 財団法人サイトウキネン財団
サイトウ・キネン・フェスティバル松本実行委員会
  協  力 東京フィルハーモニー交響楽団

以上、ニュースリリースから構成/文責:監修者
(2002/08/13 up)


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