1.歌劇「はるかなる響き」について ―― シュレーカーの手記 ―― |
「はるかなる響き」は、ある二重の求めによって生を享けた。 まだ若かった私は、血潮をわき立たせていた。 若さ、そして自己表現へのあくなき欲求! そう、欲求、芸術の理想の達成への追及、名声欲、生の悦びへの欲求、ある女性への熱望、そして愛の渇望。 そして私は創造欲に燃え、あらゆる事物を響きの世界に結実させようと。 しかし私には物語が、台本がなかった。 このまだ顕わになっていない力を響きに昇華させうるものは、ドラマの芸術、音楽芸術においてのみであることが私にはよくわかっていたのに。 私の前にあったのはくだらない代物だった。うらぶれた詩人や金目当てのジャーナリストの台本。 まさにこの時、私は私自身に目を向けたのだった・・・生起しつつあるドラマそのものであり、結末の見えない愚かなこの人生、私たちに荒々しく降りかかる悲劇の数々。 こうして私は「はるかなる響き」を私自身から生み出した。若き日の私の経験から。 フランツ・シュレーカー
*CDライナーノート英語訳から訳出 |