君が雨月物語を手に取ったから…
1999年7月1日、年月日を明記しよう。それほど記念すべき日だ。
その夜、私は夫の命じられて所用の英文Eメールを打っていた。
「差出人は夫名義なのだから、彼が自分で打てばいいのに」なんて思いながら、
作業の手を休めてふと見ると、本棚の前で夫は 『雨月物語』を広げているではないか。
忽然とDOZI本が我が家に現われて、やがて自己増殖
を繰り返す(なんて訳なく、収集に努めたのだが)ことかれこれ半年。 君も
とうとうDOZI本を手にとってしまったわね。うっふっふ。
内心ほくそえみつつ、しらんふり、しらんふりで私はEメール作成作業を続ける。
いつの間にか、我が家の本棚占有率を圧倒的に高めているDOZI本の数々。
その中で、取っ掛かりが“正当な古典”というあたりが、少女漫画にほとんど
免疫のない彼らしい。
それでも、ちゃんと読んでいる。時には笑い声さえ上げて。
やがて、おや、読み終わったのかえ? という風情。
ん? 今度は小学館叢書の
『風恋記』に手を伸ばしている。良い傾向。にっこり。
思えば、今年の1月24日、私がマーガレットコミック
『あ〜ら わが殿!』を
持ち帰った時は、予想通り拒絶反応。
ぱらぱらページをめくって、次の瞬間「ぎゃああ、少女漫画ではないか!」と
悲鳴。― 自分の妻は少女漫画を読まないと思っていたのだろうか?と、素朴な疑問も
湧いてくるけれど ―
やがて4月に入りこのHPを立ち上げていた頃、私の机の横に山と積んでるDOZI本の表紙を
眺めては、時折、質問を投げかけてきた。
「これは、アラベスクを描いた人?」
「そうね、これは山岸涼子に似ているわね」
「ちがうの?」「うん、ちがうの」
「11人いるを描いた人?」
「確かに萩尾望都っぽい感じね、これは」
彼の記憶には、山岸涼子の名も萩尾望都の名も入り込む余地がない様子だ。
DOZI様の名前も、まだ、認識していないみたい。
でも、まあ、1冊でも読みはじめたのだから、今のところはこれで
良しとしておこう。先は長い。
・・・それにつけても、夫は自分が原稿のネタにされるとは思っていないでしょうねぇ。
この原稿にいつ気付くかしら・・・。ある時、突然このページがなくなっていたら
それが“その時”かもしれません。うふ !
(1999.7.21 up)
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