2001年7月13日 その2 |
なつかしい話題を一つお願いします。 他でもない「16人のフィリップ」についてですが…。 「出場16回目のフィリップ」は『王子さまがいいの!』の中でふっと使った言葉ですが、誰と誰をさしていたのか、もう忘れましたねえ。 作者としては、他人が決めてくれる楽しみもありますし。 “目頭の水溜り”があろうがなかろうが、フィリップであるかどうかは性格で決まります。 だいたいが悪役で、そして、粋(イキ)であること――。主人公の兄貴分というかオトナの役回りです。 そう、物語の“途中で死んでも良い”ようなキャラというか。 私の作品の中には因果応報的な“規範”みたいなものがあって、主人公が途中で変な死に方をすると困ります。 だけど、フィリップは主役ではないから途中で死んでもかまわない。(笑) 「『いとし君へのセレナーデ』(集英社文庫『花ざかりのロマンス』に収録)に登場するデートレフは、フィリップではない」 ――実は、拙サイトのフィリップ・レポートをご覧になった方から、こんなメールをいただいたことがあります。 あら、デートレフはフィリップですよ。 今お話したとおりの理由で典型的なフィリップです。 そう言えば、『いとし君へのセレナーデ』の主人公・テオドールは『あばしり一家』を読んでいますね。 『いとし君への…』は1974年の新年早々の作品ですが、あの頃、スタッフだったか誰かが永井豪さんの作品を読んでいたので、書いちゃえと。(笑) あの時代は、『あばしり一家』のように何にも縛られないエネルギーが横溢、爆発するような作品が躍動していましたね。
ご参考までに、『あばしり一家』の基礎知識?です。 1969年の週刊チャンピオン創刊号から、1974年まで同誌に連載していた作品です。 話にオチがつこうがつくまいが、全くお構いなし。ひたすらノリと勢いです。 荒唐無稽を通り越して支離滅裂なまでのナンセンス、破壊的で理不尽なバイオレンス、もちろん女の子の裸も遠慮なく描かれています。 (というか、当時としては異例の女の子を主人公にした少年漫画でした) それでいて、ふと気が付くと、主要キャラクターの名前は駄右衛門、五右衛門、直次郎、菊の助、吉三と全部、歌舞伎に由来していたり…。 ことに歌舞伎『白浪五人男』に登場する弁天小僧・菊之助は女装の盗賊。 それが『あばしり一家』では男装のヒロインの名前になっているなんて、今ふりかえるとすっごくオシャレです。 小賢しい理屈不要、なんでもアリのあの時代の息吹を凝縮したような作品だと思います。 プチフラワーの『杖と翼』も連載が始まってちょうど一年、単行本も出ました。 7月分の原稿は11日に出しました。 連日の猛暑で仕事のペースがダウンしてしまって、いつもより少し提出が遅くなりました。 かと言って、クーラーの中で仕事をすると体の調子が良くないものですから。 連載しているプチフラワーが隔月誌なので、どうしても物語の進行に時間がかかりますが、じっくりと歴史を描いてゆきたいと考えています。 アデルも、慣れない家事に四苦八苦するより歴史の渦(うず)のほうが似合うような…。 そうですね。 あ、プチフラワー7月号(5月26日発売)のアデルがお料理をする場面ですが、もちろん、あれは彼女の家事に不慣れな様子をわかりやすく説明するための描写です。 実際には、当時はあんなに広々した調理台でまな板など使いません。 お鍋のかかった炉辺(ろばた)にしゃがみこむようにして野菜の皮をむき、そのままお鍋に放り込むような感じでした。 序章(単行本1巻でいうと30〜31ページ)で描いたピボワーヌの家のように、土間の一部屋だけで、そこに食卓から家族全員のベッドから調理場(囲炉裏)まで全部一緒くたになっていたのが、あの時代の普通の家です。 アデルといえば、先生の絵柄の少女にしては顔立ちが少々地味な感じもしますが。 今まで目の調子が悪すぎて睫毛の細い線が引けなかったのですが、大分回復してきたので、今回から睫毛もちゃんと描いています。 といっても、『アンジェリク』の頃のようにバサバサ睫毛にするつもりはありませんが。 目が非常につらかったのはここ数年の体調不良の影響ですが、どうやら体調不良もどん底は抜けたようです。 なお、『杖と翼』(1)を買ってくださった皆様にお願いがあります。 27ページ、一番最初のふきだしの中に「1フラン」と印刷されていますが、あの時点での通貨単位はルーブル(リーブル)でした。 (時代的にはこの直後にフランに切り替わるのですが) 単行本にする際の誤植訂正が間に合わずそのままになってしまったので、お手数ですがお手元のご本のこの部分を訂正してください。 それと、やむをえない事情があって次号(9月26日発売分)の『杖と翼』はお休みします。 楽しみにしていただいているのに間があいて申し訳ありませんが、待っていてくださいね。 ゥ ≪補足≫ 今回のお話の中で、暑中お見舞いのトップページのために、『転生神話』からの画像部分使用および文字入のお許しいただきました。 トップページは“季節もの”ですぐに変わりますので、その画像をここに保存しておきます。
2001年7月13日電話にて 引用転載厳禁 事前に拙稿お目通しくださった永井豪先生にお礼を申し上げます。 (2001.7.23 up) |