私も摩利が、思わず詰め寄る美女夜に「火遊びはおしまい」と言っていることから、少なくとも、「ご乱行」を清算する意志があったわけだし、夢殿さんには帰国という絶対的理由があって関係は否応なく解消になっていたでしょうね。摩利が夢殿さんとの関係をどう位置づけていたのかどうか、気になるポイントはありますが、摩利はオトコでは新吾にしか心を捧げていないから、可哀相だけど、夢殿さんも、摩利にとっては魂を預ける対象としては希薄な存在かもしれないと(敬ってはいるけれど)、私は感じるのです。なぜって、結構長期に渡って、濃厚な関係を持っていながら、夢殿さんは摩利の精神を救い上げることは出来なかったのです。その救われなかった摩利の魂に一筋の光を与えたのは、再会したささめであり、それは、まりしんのストーリーの流れを変えるだけのインパクトがあったというわけです(ああ、ホントに可哀相な夢さん。あんないいオトコ明治の日本にしかいないぞ、っていうタイプなのに)。正直、読んでいたとき、ささめを抱いて「青年期の序曲(予兆だっけ?)」を聞いている摩利を見て、私の気持ちも救われたものです。
しかしながら、その後のささめちゃんと摩利の関係がどう展開したかというのも、実はもう一寸詳しく見てみたかったのでした。確かにささめちゃんは摩利の子を産みますが、「そうなる」前に摩利が花嫁候補の写真を積み上げて「どれでもいいから選んでくれ」たる暴言を吐いています。まりしん連載終了後のインタビューで、ドジ様がささめちゃんのキャラを「ばあやさん」と称していますが、まさに、彼女をばあやさん扱いの摩利。「ユンタームアリー」でナタリアにひかれていますが、それもイマイチ希薄ですから、摩利はオンナとはそういう関係でしか長続きできないんだろうかも知れなくて、あれが成り行きだったのかもしれないですが、いや、あまりにも..と思います。やさしくて残酷なユンタームアリー、というわけかな。美女夜だって可哀相だった。
個人的に、「雪」の摩利とささめちゃんのピュアな関係がとても好きなので、その完結編的に、もうひとひねり欲しかった私です。「一生着物はこれしか着ない」と少年摩利に決意させた、あのかすりと、貝がらの雪椿のかんざしを小道具に、美しい物語を欧州を舞台に見たかったな。
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